共同創業者の「つぶやき」『ツイッターで学んだいちばん大切なこと』ビズ・ストーン


「フェイスブック」を開発したのは、マーク・ザッカーバーグである。その経緯は、『ソーシャル・ネットワーク』という映画にもなったほどによく知られている。でも、同じようにSNSの大手として知られる「ツイッター」は、誰が開発したのだろう。

その本、『ツイッターで学んだいちばん大切なこと』は、図書館で背表紙を眺めていた時に偶然見つけた本だった。著者は、ビズ・ストーン。なんと彼は、「ツイッター」を創り上げたひとりであるらしい。

「ツイッター」は何人かの手によって創られた。ビズ・ストーン先生はそのひとりである。とはいえ、今は「ツイッター」そのものとは関わっていないらしいけれど。

世に出るや否や、瞬く間に社会を塗り替えた「ツイッター」。最初はある種の、流行のものに対する忌避感のようなものを持っていた。私が使い始めたのは、割と最近のことである。

象徴となる青い鳥のモチーフ。「ツイート」「フォロー」という言葉。「ツイートする」という、数年前にはなかった言葉が、今では当たり前のように飛び交っている。

それほどまでに社会に浸透している「ツイッター」だが、その裏にある創設者の想いは、この『ツイッターで学んだいちばん大切なこと』を読んで初めて知ることができた。

ビズ・ストーン先生は言う。「ツイッターはただのツールである」と。その言葉は、意外に聞こえた。社会を大きく変えたシステムを創ったにしては、控えめな表現だと感じたのだ。しかし、その言葉には深奥がある。

それは、「ツイッターを使うのはあくまでも人である」ということだ。ツイッターは、人の呟きをより広い人たちに聞かせるための、ただの道具でしかないのだ。

昨今、ツイッターを頻繁に使うため、それがいつしか義務感となり、いわゆる「SNS疲れ」を抱える人たちが増えた。けれど、そんな彼らは、ビズ先生から見れば呆れたものにでも写るのかもしれない。

疲れるくらいなら、やめてしまえばいいじゃないか。彼ならば、こう言うだろうか。道具に過ぎない「ツイッター」を疲れるまでやるなんて、と。

ましてや、時には誹謗中傷なんかも飛ばされる。顔も本名も知らない人に、どうしてこうも過激なことが言えるのだろうか。それとも、知らない人だからこそ、だろうか。

「匿名性」というツイッターの武器が、一転して不利な点へと変わっていったのは、いつからだったろう。未だに「ツイッター」の陰には、頑なにその利便さを信じない人たちが大勢控えている。

ビズ先生は、「ツイッターは政治的な立場を持たず、中立の立場を保つ」という姿勢を一貫していた。「ツイッターはただのツールである」という言葉が、その続きに来ている。

彼は最後まで、人の良心を信じ続けた。「ツイッター」は彼にとって、素晴らしい人の善性の言葉を、より多くの人に伝えるための「ただのツール」だった。

今の私たちは、彼の言葉に、胸を張っていくことができるだろうか。

近年、「バカッター」と呼ばれる言葉がよく耳に聞こえた。誹謗中傷は未だに絶えることなく、出会い系をはじめとしてツイッターで金を稼ごうという詐欺もよく見る。ストーカーじみた被害に遭ったという話も聞いたことがある。

私たちは、果たして人間の良心に恥じない「ツイッター」の使い方ができているのだろうか。そのことを今、改めて振り返ってみるべきかもしれない。たったの140文字で、人を傷つけることも、喜ばすことも、簡単にできるのだから。

始まりのツイート

二〇〇三年十月七日、ボストンにあるブログ運営会社ジーニアス・ラボは、グーグルに買収されたと発表した。ウィキペディアに載ると、たいていのことは事実として定着する。

ジーニアス・ラボは存在した。それは僕自身だった。僕がどうやってグーグルに買収されたかという話は、僕がどうやってその後成功を手にしたかという話に大きく関わっている。

その一年前、僕にとって未来は明るいものには見えなかった。「ウェブの会社を創ろうぜ」というノリで友人たちと最初に立ち上げたスタートアップ、ザンガは、僕が思い描いたような結果にはならなかった。

僕の仕事人生と呼べるものの中で、唯一希望の光だったのがブログだ。僕にとってブログは新たな発見であり、革命だったともいえる。まったく新しいスケールの、情報の民主化と呼ぶべきものだった。

ブログは第二の自分だった。そのとき、僕の会社はまだ存在しなかった。それでもワイリー・コヨーテの精神にのっとり、僕は自分のブログを「ビズ・ストーン 天才」と名付けた。

僕の分身、天才ビズのブログは、その間も自信にあふれた文を書き続け、フォロワーの数を増やしていった。だが、そうしたはったりを続けるうち、やがて変化が現れた。ブログの投稿が、ただのでたらめだけではなくなっていったのだ。

〔僕が使っているRSリーダーは二五五文字に設定されている。これからはこの二五五文字がブログの標準文字数になるかもしれないぞ〕

この時は思いつきにすぎなかったこうしたアイデアが、のちに世界を変えることになるとは、当時の僕は思いもしなかった。これは、天才を自称した僕の、謙虚で控えめな偽らざる気持ちだ。

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