ヒロインたちのその後『結物語』西尾維新
恋人と大喧嘩をした。これほどまでに激しい喧嘩になったのは、本当に久しぶりのことである。
恋人と大喧嘩をした。これほどまでに激しい喧嘩になったのは、本当に久しぶりのことである。
眺めているカルテの文字がぼやけている。机の上の珈琲を喉に流し込んで、襲い来る眠気を打ち払った。
あーあ、もうひとり、私がいてくれたらいいのに。なんて、私はそう願った。願ってしまったのだった。
私には高校生の頃から夢がある。無数の本に潰されて最期を迎えたいという夢である。
それは昔々の物語。はるか遠くの国の、あるところに、ひとりの王子がおりました。
私は震える指先で、そうっとドミノを並べていく。連なっていく小さな板を倒さないように、一枚ずつ、一枚ずつ。
彼女は愚かである。そして、彼女が愚かなことは、彼女以外のクラスメイトの誰もが知っていた。
人の命を救う。それが私の仕事だった。
鏡の中の世界、という別の空間の存在を、私は子どもの頃、たしかに信じていたものである。
壊れた人間なんてのは、一見すれば普通の人間と変わらない。けれど、たしかに何かがおかしいのだ。