「雨の日、なんだか体調悪い」が消える『「雨ダルさん」の本』佐藤純


雨の日は嫌いだ。憂鬱な気分になる、というのは、よく聞く話だ。私も、もちろん、そう。でも、なんだか気分が悪いという言葉では収まらないような、そんなことすらある。

 

その日も、目が覚めてすぐ、頭に鈍痛を感じる。こんな日は、きっと曇りだ。それか、雨。カーテンを開けると、ほら、やっぱり。ぽつぽつと雨が降っていた。

 

雨の日か、その前後になると、気が付けば、頭痛を感じるようになっていた。学校を休むほどのものでもないし、しばらくすればきれいさっぱり消える。そのせいで、親から仮病扱いされて以来、あまり周りにも言えなくなった。

 

一度だけ、隠れて病院に行ってみたこともある。病気かと思って。でも、結果は「異常なし」。ストレスが原因だと、ありふれたことを言われただけだった。

 

私の他にも同じような人はいるのかな? とも思うけれど、親の冷たい目が思い出されるとどうしても聞けなかった。また仮病だと思われたらツライし。

 

とにかくわかっているのは、雨が降る時、いっしょに私の体調まで悪くなること。これも「雨が降ると気が滅入る」のひとつなのかな。

 

雨の中、傘を差して学校に行き、じわじわと締め付けるような頭痛をこらえて笑顔で友だちに挨拶しながら、どうにか午前を終えて昼休みになる。

 

みんなと騒ぐのもつらくて、ひとまず図書室に逃げ込んだ。相変わらず頭痛からは逃げきれないけれど、少し湿った静けさは私の心にひと息吐かせた。

 

せっかくだからと思って本の背表紙をぼんやり眺めていると、ふと、気になる本を見つけた。『「雨ダルさん」の本』。サブタイトルには、『「雨の日、なんだか体調悪い」がスーッと消える』と書かれている。

 

もしかして、と微かな期待が胸に灯る。病院の先生すら原因のわからない、この頭痛。雨が降ると突然ひどくなる。そんな毎日を解決する方法が、この本に書かれているんじゃないか。私はその本を手に取った。

 

「雨が降ると体調が悪くなる人」というのがいるらしい。もちろん、私も当てはまっている気がする。この本では、そんな人たちのことを「雨ダルさん」と称していた。

 

「不調を周りから理解してもらえない」そんな言葉に、思わずウンウンと頷く。わかってくれる人が、こんなところにいたんだ。

 

読んでいくと、驚きのことがわかった。なんと、この頭痛の原因は気圧の変化のせいらしい。ストレスや心の病気じゃない、ちゃんとした原因があるんだ。そのことに、思わずほっとした。

 

でも、気圧の変化なんて避けようがない。とすると、ずっと雨の日は我慢するしかないのかな。いや、そんなことはなかった。ちゃんと解決法も書いてある。

 

要するに、自律神経やホルモンの乱れを治さなければいけないらしい。大切なのは、毎日の食生活と睡眠。それから、応急処置としてツボ押しとかもいいのだという。

 

さっそく試してみる。ちょっと気持ちいい。でも、簡単にできそう。日常生活を整えるのは大変そうだけれど、普段、寝る前にスマホをいじるのをやめたら、早く寝ることもできるかもしれない。

 

そうか、私は「雨ダルさん」だったのか。そのちょっとかわいい言葉の響きも好きだった。でも、やっぱりツラいから治したい。頑張ろう。そっと胸の前で握った拳に、晴れた空の雲間から差した日の光がすっと照らした。まるで「がんばれ」と言ってくれているように。

 

 

雨ダルさんのために

 

この本は、「雨が降ると急に体調が悪くなる人」に、少しでも楽になる方法を知ってもらいたくて書きました。誰だって雨は嫌いです。でも、雨ダルさんの場合は、だいぶ深刻です。

 

雨雲が近づいてくると、雨ダルさんの身体には異変が現れ始めます。天気がくずれるたびに謎の不調に見舞われる、それが雨ダルさんです。

 

まじめな雨ダルさんはこれらを「心の弱さ」だと思い込み、自分を責めてしまいがちです。そもそも「痛み」や「ダルさ」は、その人にしかわからないもの。周囲に理解されず、ひとり耐え続けている雨ダルさんが、この世の中にはたくさんいます。

 

そんな雨ダルさんの存在に、私が気付き始めたのはいつ頃だったでしょうか。研究や実験を続けていくと、雨の日に起こる頭痛やめまいの原因のひとつに「気圧変化」が関係していることがわかりました。

 

雨ダルさんは心の弱い人でも怠け者でもありません。決して原因不明の病気ではなく、誰の身にも起こり得る、とてもありふれた現象なのです。

 

雨ダルさんの症状は多岐にわたっています。中でも頭痛の悩みがもっとも多く、典型的な症状です。まずは、自分が雨ダルさんであることに気付いてあげることから始めましょう。

 

身体の不調の原因が天気ならば、どう対処すればいいのでしょうか? 少し視点を変えてみると、その答えがわかります。あなた自身の身体を変えていけばいいのです。天気痛は自分の身体を見つめ直すよい「きっかけ」にもなります。

 

雨ダルさんのことを多くの人に知ってほしい。気圧の変化は、人の身体に大きな影響を及ぼすことを、ひとりでも多くの人に理解してもらいたいのです。

 

 

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