全てはこの時のために『天使の黙示録』望月麻衣
私は選ばれし人間だ。私の想い通りにならないことはない。かつての私は、愚かにもそう信じて疑わなかった。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
私は選ばれし人間だ。私の想い通りにならないことはない。かつての私は、愚かにもそう信じて疑わなかった。
彼女のことを誰よりも守りたいと思う。けれど、彼女にとって一番危険なのは、僕自身なのだ。
どうしてこんな力を私が持っているのか、わからなかった。いっそのこと、普通の女の子だったなら、こんな思いはしなかっただろうに。
豪奢に飾られた玉座。それは多くの犠牲の上に立つ、呪われた場所だ。俺は震える身体を抑えつけて、その椅子に、腰かけた。
子どもの頃から赤ちゃんが欲しかった。愛する人との子どもを産んで、幸せな家庭を築くことが私の目指す幸せだった。
窓から見下ろすと、庭師に手入れされた大きな庭が広がっている。生まれた頃から見てきたそれが、今は少し恨めしく思う。
その時の光景を、私は二度と忘れないだろう。私はその時、たしかに見たのだ。彼女の背に、二対の白い翼が開くのを。
二度と会えないわけじゃない。自分にそう言い聞かせる。けれど、遠ざかっていく彼の背中に駆け寄って抱き着きたかった。私は呆然と、小さくなって...
俺は隣に座る彼女の俯いた横顔を見つめる。まるであの頃に戻ったかのように、俺の心の中で抑えていた想いが再び燃え上がったような気がした。
スマホの液晶に書かれている文章を目で追っていく。もう何度も読んだはずなのに、まるで初めて読んだ時のように胸がどきどきする。