これから法律を学ぶあなたに『日本一やさしい法律の教科書』品川皓亮


いざ法律を学んでみようと決意して数日、すでに私は挫折しかけていた。だって、法律の本っておもしろくないんだもの!

 

どうして法律の本はどれもこんななのだろう。思わずそうため息を吐いてしまうくらいには、法律の本は堅苦しく、面白みのないものばかりだった。

 

もちろん、法律を学ぶと決めたからには、楽しくなくても学ぼうとは思っている。思ってはいるけれど、どうしても、法律の本はつまらなくて、眠くなってしまう。

 

法律をただ羅列して、それがどんな法律かというのを書いているだけ。ドラマもストーリーも何もない。教科書のような堅苦しさが法律の本には必須なのだろうかとすら思ってしまうくらいだった。

 

最初に図書館で借りた本は、ようやく残り一冊。学び始めた時の意欲もすっかり枯れ果てて、「ああ、またか」とうんざりしながら、最後の本を手に取る。

 

それは、『日本一やさしい法律の教科書』という本だった。「また教科書かぁ」と自分で借りておきながら思いつつ、期待することなくページを開く。

 

けれど、すぐに私は気が付けばだらけていた姿勢を正し、前のめりになって本を読むことに集中していた。その本は、今まで読んできた法律の本とどこか違っていたのだ。

 

青い表紙の真ん中にいる、力が抜けてしまうようなユルい犬のキャラクター。彼も私と同じように、法律の、いわゆる初心者らしい。

 

そして、地の文が教えてくれる法律についての話を、その犬のキャラクターといっしょに学んでいく、というのが、その本だった。

 

今までの教科書めいた堅苦しさとは違って、そこにはちゃんとストーリーがある。しかも、犬の彼が抱く疑問も、ことごとく読んでいる私たちの疑問を代弁してくれているかのように的確だ。

 

さらに、その本では例題を踏まえて法律がどのようになっているのかということを、とてもわかりやすく教えてくれている。眠気が起こってくることもないし、ただ羅列されるよりもすぐに理解できた。

 

例えば、物の所有権の話。AさんがBさんに時計を売った時、Bさんがお金を支払って、一週間後に時計を受け渡す約束をしたとする。

 

けれど、その一週間の間に、AさんがCさんに時計を売った。Cさんはその場でお金を支払い、時計をすぐに受け取った。この場合、時計は誰のものになるのか。

 

物の所有権は「受け渡し」で移動するらしい。つまり、時計はCさんのものになる。Bさんはお金を支払っているのに時計を手に入れられない、というわけだ。

 

なんとも理不尽なようだけど、それが法律で決まっているのだという。そんな知らなかったことを、新しく学ぶことができた。

 

今まで法律は、あくまでも「法律」でしかなかった。それはただの知識としてのパーツのひとつであって、それを覚えるだけだった。

 

けれど、この本が教えてくれたのは、そんな条文にも、裏には「物語」があるのだということだ。定められた法律を巡る物語には、名前も知らない誰かのストーリーがある。

 

いわば、法律を学ぶということは、ただ法律や条文を記憶していくという退屈な作業ではない。その条文の裏にある物語を読む、「読書」のひとつなのだ。

 

もっと、この「物語」を読んでみたいという思いが、私の胸中にふつふつと湧いてくる。その物語を読むためには、法律を学んでいくことだ。

 

私の中で尽き果てかけていた「法律を学ぶ」という意欲が、再び燃え上がってくるのを感じた。しかも、それは今までとは比べものにならないほど強い。

 

だって、私はもう知ってしまったから。この本が教えてくれたのだ。「法律は面白い」のだと。法律を楽しく学ぶための方法を。

 

 

条文の奥に隠れた物語

 

法律の面白さを誰でも体感できる入門書をつくりたい。こんな想いから、本書は生まれました。

 

ひとつひとつの条文の奥には、たくさんのドラマチックな「物語」が隠れています。私はこれらの「物語」や「人間臭さ」を学ぶことが、法律の面白さを体感することであると考えています。

 

しかし残念なことに、「楽しい」「よくわかる」などと謳ったこれまでの入門書の多くは、内容が難しすぎたり、法律の基礎知識を羅列するにとどまっていたりして、法律の面白さを伝えることに成功したとは言い難いものでした。

 

そこで私の中に「法律の面白さを誰でも体感できる入門書をつくりたい」という想いが生まれ、これが本書を貫くテーマとなっています。

 

今日の社会においては、法律と無関係に一生を終えることのできる人はいないといっても過言ではありません。そんなとき、「せっかく法律を学ぶなら、”楽しく”学んでもらいたい」というのが、私の願いです。

 

本書では、条文の奥に秘められた「物語」を読者のみなさんと読み解いていくことにより、法律の勉強でもっとも面白い部分を味わっていただきたいと考えています。

 

本書を手に取ってくださった方々が法律の醍醐味に触れ、楽しく法律を学ぶことで、法律にさらに興味をもっていただけることを願ってやみません。

 

 

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