自分で本を出版しよう『本づくりの本』村上光太郎


文章を書いていて、いつも思う。自分の作品がもしも本になったなら、いったいどれほど嬉しいだろう。だが、そんな未来は果たして訪れるのだろうか。

 

「ならさ、自分で出しちゃえばいいじゃん」

 

そう言ったのは、私の長年の友人であった。寝そべってマンガ本をぺらぺらめくっているまま私の悩みを聞いた友人は、いかにも投げやりな態度で、興味がなさそうに。私の胸中に理不尽な怒りがこみ上げる。

 

こいつ、人が悩みを相談している時になんたる態度か。いっそ、その読んでいるマンガを洗濯機にでも放り込みたくなるが、それは私が買ったマンガ本だから損するのは私である。悔しさを抑え、言葉だけで終わらせることに努めた私を誰か褒めてほしい。

 

「お前な、人が相談しているって時くらい真面目に聞けよ」

 

「聞いてるよ。いや、だから出せばいいじゃんって」

 

「出せばいいって、どういうことだよ。そんな気楽に言っても、賞に応募とかして受賞するのがどれほど大変か……」

 

「いや、そうじゃなくてさ」

 

友人はようやくマンガを閉じて、寝そべった姿勢から起き上がった。呆れたような視線が私の方を向く。なんでわからないのかなぁ、と、その視線は雄弁に語っていた。

 

「だからさ、何も本を出版するのに、受賞しなければならない、なんてことはないだろ?」

 

彼はそう言って、とんとんと人差し指で本の背表紙を叩いた。

 

「自費出版すればいいじゃん」

 

その言葉に、私は目を見開いた。自費出版! それは、今まで私の発想に一度として浮き上がったことのない発想であった。

 

そうだ、考えてみれば、自分で出版するという手段もあるのだ。何も何かしらの賞に受賞した作品だけが本になるわけではない。

 

だが、私の心は途端に重くなった。まるで何かが足を引っ張っているように。そうだ、そんな簡単な話じゃないのだ。自費出版をするには、いくつもの高いハードルがそびえ立っている。

 

「だ、だが、自費出版って相当お金がかかるだろ。そんなの出せるわけないし」

 

「本を出したいんじゃなかったのかよ。夢を叶えるためなら、そんな金くらいはポンと出さないと。それとも、お前の言う夢はその程度の覚悟もないのか?」

 

「うぐっ」

 

こいつ、なんでさっきまで寝そべってマンガを読んでいたのに、突然そんな本質を突くようなことを。私は思わず胸を押さえた。それでも、なんとか反論を振りかざす。

 

「いや、だが、ただの素人だぞ。やり方も何もわからないじゃないか。そもそも、自費出版の仕組みも、どうやってやるかも何ひとつ知らないのに」

 

「そんなの、これから学べばいい話じゃないか」

 

ほら、と、彼は一冊の本を手渡してきた。何であろうかこれは、と思って表紙を見てみると、そこには『本づくりの本』と書かれている。

 

「自費出版の仕組みややり方が書かれている本だ。読んでみたが、結構わかりやすく、しかも細かく解説されているから、よく読めばあっという間に理解できる」

 

私はその本を手に、しばし呆然とした。いや、そもそも、なぜ彼がこんな本をちょうどよく持っているのだろうか。私のそんな疑問を視線から受け取ったのか、彼は少し目を逸らして恥ずかしげに頬をかいた。

 

「本を出したいと思っているのはお前だけじゃないってことだよ。だから、ちょっと調べてたんだ」

 

彼がそう言った瞬間、私は悟った。彼は、私よりも遥かに先にいるのだ。私が自ら行動しようともせず、ただ口先だけの夢物語を吐き出している間にも、彼は、夢を叶えるために邁進し続けていた。

 

そもそも、なぜ私は自分の足を引っ張るようなことを繰り返しているのだろう。やらない理由を必死になって探しているのだろう、本を出したいという想いはたしかにあるのに。

 

いや、答えなんてわかりきっていた。私は怖いのだ。夢が叶うのが。いつまでも夢を持っている快感に浸っていたいのだ。だが、本当にこのままでいいのか。私はずっと、「本を出したい」と嘯きながら生きていくのか。

 

自分の手の中にある『本づくりの本』を見下ろす。そうだ、手段はすでに私の手の中にあるのだ。夢に手が届く。先を行っている友の背中に、私は手を伸ばした。

 

 

自費出版の指南書

 

著者の皆様はエネルギッシュな方たちばかりです。まだ若い二十代の方から九十歳以上の方まで、常に何らかの自己表現を目指して突進しています。そこにはほとばしる熱いものがあります。

 

自費出版は、単なる自己表現の手段のひとつに過ぎません。ところが大部分の方々が自費出版のことになると、実体がよくわからない、といった感想を持っています。

 

そういう大勢の「自分を表現したい」「自費出版をしたいが仕組みや工程などがわかりにくい」という方々のために、自費出版のしくみを説明することにしました。

 

この本は、本を出したい、と一念発起したときから、出版に辿り着くまでを、わかりやすく「起承転結」の各章にまとめたものです。

 

この本を読み終えたあなたの生きがいメニューに、本づくりが加えられたとしたら、本づくり大好き人間の著者にとってこれ以上の喜びはありません。

 

私は最近とみに、自分の人生を書き残す、自分の主張を世間にぶっつけてみる、といったことが、人間として絶対やっておかなければならない重要なことだと思うようになりました。

 

「一億総自費出版時代」はすぐそこです。そして出版の時期は、思い立った時こそが「自分自身の名著」の胎動と言えるのではないでしょうか。

 

悔いなき人生とはよくいわれる言葉ですが、いつも私は「やらないで後悔するよりやって後悔したい」と考えています。一歩前に進むこと、それが人生ですから。

 

 

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