コツを掴めば誰でもレベルを上げられる『上達のコツ』中山和義


いくら努力しても実らない。チームメイトたちの中で、俺だけが、彼らの背中に追いつけていなかった。どうすればいい。どうすれば。俺にはいったい、何が足りないのだろう。

 

二年生も、もうすぐ終わりだ。俺も、もうじき三年生になる。野球部でも「先輩」と呼ばれる方が多い学年になった。引退まで、残された時間は少ない。

 

恋愛も遊びもせず、部活一筋だった。ひたすら白球を追いかけ、血が滲むまでバットを振るった。誰よりも早く練習に来て、誰よりも遅く残るのも俺だった。

 

それなのに、どうしてだろう。同じ頃に始めたチームメイトたちは、みんな上手くなってレギュラーとして活躍している。強豪校のひとつに数えられるこの学校の、立派な戦力の柱だった。

 

俺たちの後に入学してきた後輩たちも、あっという間に成長して、気付けば素晴らしい選手になっている。若く、逞しい彼らなら、今のレギュラーにも劣らない活躍を見せてくれるのだろう。

 

俺だけだった。入学してからずっと、俺だけが下手で、補欠のままだった。俺はいつもチームメイトたちの背中をはるか後ろから追いかけていって、そして新たに入ってきた後輩たちも追い越していった。

 

自分よりも上手い後輩から「先輩」と呼ばれることが申し訳なかった。レギュラーに選ばれるたびに、気まずそうな視線が向けられるのが恥ずかしい。嘲笑と、憐憫と、同情が俺に向けられる全てだった。

 

「努力は必ず実る」と、父は言った。その言葉を信じた俺は、とんだバカだった。俺がひたすらに、何もかもを捨ててまで続けてきた努力は、俺を踏みにじったのだ。

 

もうやめようと、何度思ったことだろう。だが、それはここまで努力してきた自分自身を否定することになる。せめて、何かこの部活に俺がいたという爪痕を、ほんの少しでも残したかった。

 

だが、どうすればいい。どうすれば。そんな俺の迷いに答えをくれたのは、国語を担当している先生だった。

 

彼との接点は授業以外にはほとんどない。だから、図書室に呼び出された時は叱られるのだろうかと思った。部活につぎ込んでいるせいで、俺の成績は芳しくない。

 

「そう身構えなくてもいいよ。ちょっと話をするだけだから。時間をとらせて悪いね」

 

彼はそう言って穏やかな表情で笑った。だが、ならばなおさら、どうして俺は呼び出されたのか。

 

「いやね、何か君の助けになれないものかな、と思ってね」

 

「どういうことですか」

 

「見なよ」

 

先生の視線の先を追いかけると、その先には窓がある。向こう側には、慣れ親しんだグラウンドが見えていた。俺が青春を過ごしてきた場所。

 

「ここから野球部が見えるんだよね。いつも見させてもらってるよ、君の頑張りを」

 

不意に泣きそうになった。俺の努力が、初めて認められたような気がしたのだ。だけど、どこか照れ臭くなって、俺は視線を逸らした。

 

「……でも、下手ですよ、俺」

 

「今はね。でも、君は誰よりも上手くなるよ」

 

実は、と、彼は気恥ずかしそうに言った。

 

「僕は今でこそこうして図書室の顧問なんてやってるけどね、君くらいの年の頃には野球少年だったんだ。下手くそだったけどね。努力も、あまりしない、不真面目な選手だったよ」

 

「……」

 

「だから、君のことを尊敬しているんだよ。いわば、ファンだね。君を呼び出したのも、君と話したかったからさ。これを、ほら」

 

そう言って先生は、一冊の本を手渡してきた。『上達のコツ』と書かれている。問うように視線を向けると、先生は微笑みを浮かべた。

 

「これはね、僕が先生になってから読んで感銘を受けた本なんだ。著者の中山和義さんはテニスのコーチでね、だから本の内容もテニスを例に挙げて書かれている」

 

努力の方向性を指し示してくれる本だよ。今の君に、きっと必要なんじゃないかな。先生はそう言った。

 

「俺、本、苦手です」

 

「まあ、読まなくても構わないさ。それは僕の私物だからね、ずっと持っててくれてもいい。ただ、このままだと駄目だと、思ってるんじゃないのかい?」

 

その通りだった。俺は、黙ったまま頷く。

 

「本は悩んでいる誰かの背中を押してあげるために書かれている。その本は、きっと君の助けになってくれると思うよ」

 

上達のコツ。俺はその表紙を眺める。努力なんて無駄だった。だけど、この本を読めば、俺の努力に意味を持たせることができるのか。

 

夏の甲子園を最後に、俺たちは引退する。それまでに、せめて、少しでも上へ。努力は大事だ。だが、努力だけでは必ず挫折を迎える瞬間が訪れる。さらに上に行くには、努力だけでは足りないのだ。

 

 

上達するためのコツ

 

上達をするためには努力は必要です。しかし、それだけでは、足りません。せっかくの努力が上達を妨げてしまう原因をつくってしまうこともあります。

 

「あの人は何でもすぐに上達できる」と言われる人と、何をやってもなかなか上達できない人がいます。その違いは、上達のコツを知っているかどうかです。

 

そして、このコツを知っているかどうかは、仕事の能率を上げるだけではなく、趣味などを通じて、プライベートにも影響を与えます。上達のコツを知ることで、人生が大きく変わることもあるのです。

 

上達には、コツがあります。そのコツを知って、正しい努力をすれば、誰でも上達をすることができます。そして、何かひとつ、人よりも際立ったものを身につけることができれば、それは、あなたの人生を変える大きな力になります。

 

この本は、がんばって努力をしているのに、結果がなかなか出なくて上達をあきらめようとしている人のために、これまで私が研究したことをまとめて書きました。

 

もしも努力の結果が出なくて悩んでいるのなら、この本を読んでください。すぐにお役に立てるはずです。

 

 

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