忍耐は成功のもと『忍耐の法』大川隆法


 何をしても上手くいかない。違う、違う、そんなはずはない。こんな簡単なこと、自分はたしかにできていたはずなのに。今はもう、どうすればいいのかすらわからない。

 

 

 スランプというものを実感したのは初めてのことだった。今まで自分がどうやっていたかということが、どうしてもわからない。

 

 

 苦しい。苦しい。できないということは、こんなにも苦しいことなのか。まるで自分という存在そのものが脅かされているかのような。

 

 

「スランプなんて、いつか何事もなかったみたいに終わるから大丈夫だよ」

 

 

 彼女には、そう言われた。たしかにそうかもしれない。しかし、今の僕には、そんなことを考える余裕なんてなかった。

 

 

 もしも、一生続いたら。僕はこの先ずっと、何もできなくなっている。そうではない証拠なんて、いったいどこにあるというのか。

 

 

 僕は恐ろしさのあまり、何も手につかなくなった。迷うままにうろうろと街をうろつく。そんなことしかしていなかった。

 

 

 その本と出会ったのは、そんなときだ。小さな地方の図書館の片隅に、その本は置いてあった。

 

 

 『忍耐の法』という本だ。作者は大川隆法先生。どこかで聞いたことがある名前だ、と、僕は首を傾げて、思い出した。

 

 

 たしか、「幸福の科学」という宗教団体の教祖だったはずだ。一時期、人気の女優が関わりを持ったことで話題になっていた。

 

 

 僕は宗教というものに、あまり興味はない。けれど、その本をその時、手に取ったのは、何か感じるものがあったのだろうか。

 

 

 そう思ったのは、その本の内容が、僕のその時の悩みをきれいに洗い流してくれたからだ。

 

 

 その本は、忍耐について書かれていた。苦難に耐え、厳しいスランプの時期であっても、未来を信じて耐え忍ぶことが必要なのだ、と。

 

 

 宗教の本だということもあって、その内容にはしばしば首を傾けざるを得ないようなことも書かれている。

 

 

 しかし、それ以上に、その本に綴られた、「忍耐」ということ、辛い時期を乗り越えること、そして、その先に今の自分よりも一歩進んだ自分がいることは、僕に今を頑張り切る勇気をくれた。

 

 

 あの本があったからこそ、今の僕がいるといっても過言ではないだろう。宗教の本だと忌避していたら、この出会いはそもそもなかったのだ。

 

 

 どんな本からでも得られるものはある。今までは好きな本ばかりを読んできた僕は、それ以来、興味がない分野も含めて幅広いジャンルの本を読むようになった。

 

 

 どれほど深い夜でも、必ず夜明けは来る。ずっと続く苦難なんてないのだ。スランプの時期は、自分を見つめ直し、力や知識を蓄えるチャンスでもある。

 

 

 スランプを経験してこそ、新たな道を拓くことができるのだ。それは、今までの自分よりも遥か高みに、自分を登らせてくれる。

 

 

 成功ばかりの生活ほど、乾いている人生はない。上手くいってばかりでは、必ず壁に当たることになる。そして、そうなった時に、乗り越える術を知らず、諦めてしまうしかない。

 

 

 諦めずに壁を登ろうとした人たちだけが、今までとは別の方法を見つけ、傷だらけになりながらも、いつか壁を越えることができるのだ。

 

 

 今の僕は、すっかりスランプを抜けきって、成功を手にしている。とはいえ、そのことを慢心するつもりはない。それもまた、あの苦難の日々があったからこそだ。

 

 

 つらかったけれど、あの時期もまた、僕の人生において必要な時期だったのだと、はっきりと言える。苦しいからこそ、そこに価値がある。

 

 

 信じる者は救われる。他人でも、宗教でもなく、自分自身を信じること。まずはそこから、始めてみよう。

 

 

忍耐力

 

 職業としての「宗教家」というのは、実に鍛えられるものである。特に「忍耐力」ということに関しては、必修の修行であるといってもよいだろう。

 

 

 まず親、兄弟姉妹、夫婦、親戚からの反対に始まって、近所や職場の悪口に耐え、クレームに耐え、さらに週刊誌の批判に耐える。

 

 

 さらには、メディアの権力に耐え、時には、政府の弾圧にも耐える。外から後進の者たちの足を引っぱるのに耐える。

 

 

 トータルで言えば、「世間の常識」や「学問の常識」や「伝統宗教の常識」とも戦い続けなければ、「真理の法灯」は護り続けることができない。

 

 

 過去の偉人の極端な例を挙げたが、歴史に名を残した方々は、必ずしも順風満帆な人生ではなかっということだ。

 

 

 たとえ苦しくとも、耐え続ける中に、真実は光ってくるものだ。ただ耐え忍びの時は、心を強くし、平凡でもいいからコツコツと努力を続けることだ。

 

 

 いずれスランプを乗り切り、試練に打ち克ち、常識の逆転を目指しては、敗れても敗れざる者が存在することがわかる時が来るだろう。

 

 

 もうすでに私たちは、この世の「常識」の一線を超えてしまった。不退転の気持ちで戦い続けるしかあるまい。

 

 

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