イヤミスの女王のデビュー作『告白』湊かなえ
「さて、この物語の、誰が一番の悪だと思う?」
「さて、この物語の、誰が一番の悪だと思う?」
私は校庭を眺めていた。校庭では、ユニフォーム姿の青少年たちが、白球を追いかけて汗水を垂らしている。
「あと三時間で世界は終わる。さて、君ならどうするだろうか」
静かに、寝られる場所が欲しい。それが、彼女が私に言った、ただひとつのわがままだった。
私は椅子に座って本を読む老人に、ちらちらと視線を寄越す。上品なベージュのコートに袖を通し、背筋をぴんと伸ばしたその姿は小さな本屋にはあま...
その男は唐突に現れた。疲れ切った表情の、年老いた男。ぼくはその男とは会ったことがないはずなのに、その顔をどこかで見たような気がしていた。
私の人生は一枚の絵画から始まった。その絵画を見た瞬間、私の今までの人生はまったくの無意味なものとなったのだ。
私は何もかもが欲しいと思った。私の欲望はとどまるところを知らなかった。だから、私は何もかも捨てることにしたのだ。
家族といえど、もとは知らない男と女。家族の間にも、決して明かせない秘密というものは一つや二つはあるものだ。
「ん~、ほっぺた落ちそうやあ。相変わらずあんたはとろいくせにお菓子作りだけは逸品よなあ」