前代未聞のクローズド・サークル『屍人荘の殺人』今村昌弘
『未だ誰も見たことがないようなミステリを考えよ』
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
『未だ誰も見たことがないようなミステリを考えよ』
誰もが私のことをバカだと言った。そんなことは絶対に無理だと。けれど、絶対に無理だと言っていたことがもしもできたなら、それはとてもおもしろ...
「さて、この物語の、誰が一番の悪だと思う?」
私は校庭を眺めていた。校庭では、ユニフォーム姿の青少年たちが、白球を追いかけて汗水を垂らしている。
「あと三時間で世界は終わる。さて、君ならどうするだろうか」
私は椅子に座って本を読む老人に、ちらちらと視線を寄越す。上品なベージュのコートに袖を通し、背筋をぴんと伸ばしたその姿は小さな本屋にはあま...
私の人生は一枚の絵画から始まった。その絵画を見た瞬間、私の今までの人生はまったくの無意味なものとなったのだ。
家族といえど、もとは知らない男と女。家族の間にも、決して明かせない秘密というものは一つや二つはあるものだ。
カーテンを開けると、灰色の曇り空がどんよりと重くのしかかっていた。雨こそ降っていないが、もう少しすれば小雨でも降りそうだ。
彼女は私の全てだった。ならば、そのすべてが失われたとき、私という存在には何が残っているのだろうか。