一日の仕事は掃除から始まる。タイムカードを切り、掃除、パソコンに届いているメールを確認し、必要ならば返信していく。机の上に溜まっている書類を処理して、無数にいる取引先や顧客の質問に答えていく。それが俺の一日だ。
思わずため息が出る。やることが多すぎて頭がパンクしそうだった。入社した当初は簡単だったはずの仕事が、時を経るごとに増え続け、今や一日ではとても終えることができない。
だが、どれも疎かにすることはできなかった。上司の鷹のような目が光っている。手を抜いていたら、呼び出されて注意を受けるのが常だった。
ああ、もう嫌だ、こんな仕事。適当な会社で給料を稼いで、海外旅行に行くのが俺の夢だったのに。今ならばわかる。それは遠い夢だ。俺の時間は仕事に埋め尽くされていて、そんな余暇なんてどこにもなかった。
結局、終わらなかった仕事を処理するために残業する羽目になり、真っ暗になった窓の外を死んだような目で眺めながらタイムカードを押す。また明日は早朝から電車に乗って会社に行かなければならない。
帰り道、メモ帳のページがなくなったことを思い出して、書店に寄った。近所にあるその書店は雑貨店も併合されており、俺は普段から日用品の購入にも使用していた。
シンプルなデザインのメモ帳を手に持ったまま、せっかくだからとうろうろと書店の中を彷徨う。俺はもともと書店が好きだった。だが、今ではもう、そんな余裕すら持てない。
ふと、一冊の本が目に入った。よくあるビジネス書だったが、そのタイトルが、今の俺には眩しく見えた。『なぜ、週4時間働くだけでお金持ちになれるのか?』。
はっと気が付けば、レジのお姉さんが、メモ帳と一緒にその本を渡してくれていた。しまった、何をしているんだ俺、読む時間もないのに。
思わず買ってしまった本をカバンに入れたまま帰路につく。買ってしまったものは仕方がない。次の休日は昼まで寝ようと思っていたのだが、早めに起きてこの本を読むとしよう。
休日。朝早くに起きた俺は、夢中でその本を読んでいた。週4時間。そんな短い労働時間で、俺よりも遥かに多い収入を稼ぐ。そんな方法があるなんて。
働いてお金を稼いだ金持ちのことを、その本では「オールドリッチ」と呼んだ。それと比較して、その本の言うところの、金も自由も手に入れる金持ちのことを「ニューリッチ」と呼んでいる。
ニューリッチになるにはどうすればいいか。その本に書かれた結論は、長時間労働が基本になっている俺からしてみれば、驚くべきことだった。
仕事を必要最低限まで削る。それが、ニューリッチの働き方なのだという。仕事の時間が減ってしまうじゃないか。そう思ってしまうが、違うらしい。
80%/20%。意味のない仕事と意味のある仕事は、その割合で分けられる。つまり、日頃している業務のほとんどは、意味のない仕事なのだということだ。
だから、それを削る。意味のある仕事だけを集中的にこなす。そうすることで、成果を落とすことなく、仕事の時間を減らす。しかも、集中することでパフォーマンスが上がり、成果はむしろ伸びるのだという。
俺が毎日していること。メールの確認。返信。膨大な書類の処理。それらは果たして、必要なのだろうか。改めて、自分のしていることを疑問に思った。
短い時間で、高収入を得る。正直、憧れた。そんなのはできっこないと言う自分とは反対に、目をキラキラさせているかつての俺がいる。海外旅行を夢見ていた、あの頃の俺が。
ニューリッチになるためにはどうすればいいか。今の会社の、従業員という立場では不可能だった。この本を書いたフェリス氏のように、自由に仕事を変える裁量は、俺にはない。
仕事を辞めよう。今まで踏みとどまってきたその選択が、驚く程すんなりと出てきて、思わず俺は驚いた。けれど、胸の内では、広がる未来に、諦めかけていた俺がたしかに笑っているのだった。
仕事時間を短く削り、より生産的に
副業での成功、長期の旅行、転職、趣味の世界で大きなことを達成する……そんな夢を実現したい、でも定年まで待たなきゃいけない現実を抱えている全ての人に、今すぐ夢を現実にするためのノウハウを提供するのがこの本だ。
定年まで待たなくても、身も心もボロボロになるまで仕事をせずに、夢を達成できるくらいの大きな利益と、自由に活用できる時間を勝ち取る方法は、あるのだ!
金ぴかの金持ちはもう古い。人生の楽しみをすべて退職後にとっておくような人生プランを捨て去って、「ニューリッチなお金」を使って本当に豊かな、ワクワクしながら毎日が送れるライフスタイルを創り出そう。
時代の風は、みんなが望む方向に吹いている。働き過ぎのうえ給与も低くて、ウサギ小屋で暮らしているような生活から抜け出そう。
ニューリッチの仲間入りする旅はこの上なく面白いうえに、マネするのも意外と簡単だ。なぜなら、ちゃんとしたハウツーがあるのだから。
今の仕事はそのままで、自分の自由時間を倍増させる方法から、ビジネスライフをアウトソーシングする方法まで、みんなが不可能と考えていることをやってのけるビジネスマジックは、ちょっとしたコツさえつかめば、誰にだってできるのだ。
さあ、気楽にやろうぜ。みんなで一緒に楽しもう。
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